付き合いはじめの頃の私と彼の関係は、今思い返すと「ドタバタで、でも愛しくて、少し切ない」そんな日々だった。まだ彼のADHD特性を深く理解していない私は、ただ目の前の“彼という個性”に戸惑い、振り回されながら恋に落ちていた。
■ 最初のデートでいきなり戸惑う
最初のデートの日。
私が先に到着したお店はまさかの定休日。
慌てて彼にLINEで連絡し、待ち合わせ場所を変更して、乗り直したメトロの車内で「大丈夫かな…」と不安になっていた。
駅で「初めまして」と出会ったときの彼の笑顔は、今でも忘れられない。
あの日、雪が降っていた❄️
映画デートでは、彼は映画開始5分後に到着。
理由は「ニキが好きそうなお花を選んでいたから」。
また30分以上遅刻してきた4回目のデートには、私の誕生日が近かったこともあり、プレゼントにGODIVAのチョコと、彼が作った2ページだけのアルバムが。
私たち2人の写真と可愛いステッカーで飾られたページには「これからどんな楽しいことがあるかな」と書いてあって、胸がぎゅっとなった。
デートには時間通りに来た試しがないのに、このアルバムを一生懸命つくる姿を想像したら、そんなことどうでもよくなってしまった。
遅刻に慣れていない私にとっては十分ストレスなのに、その理由がロマンチックすぎて怒る気もなくなった。
こうして私は、“遅刻してくるけど憎めない彼”に少しずつ心を掴まれていった。
■ 遅刻は「大切にされていない」ことの証拠じゃなかった
当時の私はまだ彼のADHD特性を知らず、
時間を守れない人=誠実じゃない人、という極端な考え方をしていた。
きっちり、完璧主義、HSP気質の私にとって、彼のゆるさは毎回不安のトリガーになった。
でも後からADHDについての本を読んで学んだ。
“遅刻=私を軽視している”のではなく、
- 予定の切り替えが苦手
- タスクの優先順位がうまくつけられない
- 疲れやすくて集中が途切れやすい
ただそれだけだったのだ。
そして、後から彼に聞いて驚いたことがある。
私が猫アレルギーだから、デート前に「最後にもう一度コロコロして毛を取ろう」と思って、家を出る直前に慌ててやっていたらしい。
もちろん、時間の逆算をしてやってくれたら一番助かる。
でもその頃の彼は、
“今、気づいたことをその場でやらずにいられない”
という特性のほうが強かった。
実際、一緒に住んでから気づいたけれど、
彼は「出る間際に突然ひげを剃り始める」「ギリギリになって必要なものを探し始める」など、“なぜ今!?”が多い。
その行動がストレスの種になったこともあるけれど、
同時に、彼が遅刻する理由の多くは“無関心”ではなく“注意の向き方の特性”だと理解できるようになった。
そう思えるようになったことで、私の中の「大切にされていない」という誤解が少しずつほどけていった。
■ “待ち合わせのストレス”をなくすため同棲へ?
そんな私が考えたのが、
「いっそ一緒に住めば、待ち合わせのストレスは減るのでは?」
という大胆な作戦。
付き合ってすぐ同棲の話が出たのも、半分は期待、半分は不安からだった。
物件探しは進まず、気づけば私は週のほとんどを彼の家で過ごすようになり、賃貸の更新と家賃値上げのタイミングもあって、そのまま彼の家に転がり込んだ。
正直、彼は今の小さい家に私が住むことには最初は賛成していなかった。
けれど私は「一緒に住めば、もっと向き合えるはず」と思っていたし、当時の私は、その期待と不安を抱えながらも前に進もうとしていた。
結果として、この“同棲の決断”は私にとって大きな転機になった。
生活を共にすることで、私は初めて彼のADHD特性を生活レベルで感じることになる。
そして、たくさん戸惑い、たくさん傷つき、たくさん深呼吸することになる。
でも同時に、「あぁ、この人は悪気があって遅刻するんじゃない。疲れやすくて、忘れっぽくて、予定の切り替えが苦手なだけなんだ」と理解するきっかけにもなった。
付き合い始めから同棲に至るまでのこの“バタバタの一年”こそ、私がADHDの彼と生きていく上で、最初に直面した“戸惑いの入口”だったのかもしれない。
現実は…
確かに“理解は深まる”。
けれど“戸惑い”も一気に増えた。
生活を共にすると、彼のADHD特性が日常の中に鮮明に現れる。
忘れ物、先延ばし、時間感覚のズレ…。
その全部が、私の心をざわつかせた。
■ そして私は「サバ読み作戦」を編み出した
最初の頃は毎回ソワソワしていたが、途中で気づいた。
彼を変えようとするより、私の伝え方を工夫した方が早い。
そこで始めたのが、私の中で“サバ読み作戦”。
・本当の待ち合わせは19:00だけど
彼には18:45と伝える。
・友達カップルと4人で出かけるときは、
“友達との待ち合わせ時間”は明確に伝えず、
「私が早めに行きたい場所がある」と言う。
結果として、自然に友達との集合時間に間に合う。
不思議なことに、この方法だと私はイライラせず、彼も焦らない。
ほんの15分の余白が、私たちの平和を守る大事な工夫になっている。
■ あの頃の私に伝えたいこと
ADHDの彼と向き合ってきた3年間。
“最初の戸惑い”は、実は一番大事なサインだった。
「なぜ守れないの?」
「普通こうだよね?」
そんな疑問の裏には、
“私自身の不安”と“彼の特性”が混ざっていた。
今は、彼の遅刻や時間のズレを、
“愛情の量”ではなく“脳の特性”として見られるようになった。
もちろん、今でも完璧に割り切れているわけじゃない。
でも昔よりずっと楽に呼吸できる。
そして私は確信している。
最初に戸惑った部分こそ、理解の入口だった。
その入口を一歩ずつ越えていくことで、
私は彼と、そして私自身と、少しずつ優しく向き合えるようになった。
この続きも、また書いていきますね。

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